五人で車に乗り込み、楓の故郷から自分の故郷へと戻る。

車の中で少し物思いにふける。

楓は牙狼とどういった関係にあるのか。

幼い頃に田舎でよく遊んでいただけに過ぎないのか。

それとも、大きくなったら嫁に行かせるために絡ませていただけに過ぎないのか。

向こうはそれを期待していたのか。

俺が考えてるさなか、ペットボトルが前から飛んでくる。

咄嗟にそれを受け止める。

「余計な考えはよすんだ」

「楓があまりに語らないからだろ」

帰りまでは時間があるからこそ、考えてしまう。

右隣に座っている刹那は窓の外を見ており、興味がなさそうだ。

いや、興味のないフリをしているだけかもしれない。

左隣の佳奈子さんはお菓子に夢中である。

お菓子に夢中とは子供じみているように見えるが、鬼だからこそカロリー消費が非常に早いのかもしれない。

バックミラーから見える助手席のティーナさんは、いつもかわいらしい。

何故、そこまでのかわいらしさがあるのか。

何か秘密があるのか。

楓と牙狼の事などどうでもいいくらいに、真実が知りたい。

「君の下衆な考えを拡散させて欲しくはないものだな」

「俺に思考をするなというのか」

「寝ていろ、それが君にとっては最善の策だ」

楓はミント味のガムを噛み、運転している。

安眠出来るほどの安全運転ではあるが、はっきり言えば眠くない。

「あのな、昨日は疲れて爆睡してたんだよ。そう簡単に寝られるかってんだよ」

「じゃあ、君にもう一つ最善の方法があるが、それを試してやろうか？」

「いや、聞きたくない」

どうせろくでもない案なんだろう。

俺は目を閉じて出来るだけ無心になり、暗黒世界に落ちていく。