家に到着すると、刹那は身体を温めるために風呂に入った。

その間に楓に連絡をいれて、一連の作業を終了させた。

終わったのはいいが、気まずい空気は否めない。

風呂から出てきたらどうするか迷っていた。

時間は過ぎるものであり、刹那がいつまでも風呂に入っているわけがない。

湯気を立たせた刹那がピンクのパジャマを着て、風呂場のある方から俺がいるリビングに歩いてくる。

「ええ湯やったわ」

「そうか」

それ以降無言で、刹那は俺が座っているソファーの隣に座った。

刹那にとって、気まずさは関係ないのか?

だが、それは思い違いもいいところであり、深刻で悲しそうな顔が傍にあった。

刹那の悲しそうな顔を見ると何も言えなくなる。

何か考えないといけないけど、悲しい顔とは別に良い匂いがして戸惑っている。

不謹慎な俺がいるようだ。

俺はどうしようもない程駄目な奴だった。

時計の針だけが音を刻む。

しかし、無音の世界を終わらせるように刹那が声を上げた。

「ボクの荷物、届いとった?」

長く続いていた沈黙を破った割には軽い。

吉本に引けを取らずにこけそうにもなったが、深刻さがなくて安堵する。

「いや、まだだ」

「そう、なんや」

元気がない姿が続投。

最初の頃のように元気がないと調子が狂う。

自暴自棄になりたくなってきた。

でも、それは許されない。

疲労を負っているのは俺じゃなくて、刹那なんだ。

「今日はもう休めよ」

「恭耶、今日は一緒に寝てや」

「は?」

刹那のしおらしさが増しているように見えた。