第七世界

「なら、少し鷹威君がこちらへ傾く取引をしようか」

流れを変えるために、切り札を出すつもりか。

「君は真祖を探しているようだね」

「どこまで知っている?」

「君が連れの女の子を救うために動いているというところかな」

昨日の話を聞かれていたのか。

真祖を知っているところ、繋がりでもあるのだろうか。

「それで?」

「君がこの件から手を引けば情報は差し出すし、手を貸す。君が血を流す事もない」

「そうかよ」

俺は楓のほうを見たが、目を瞑ったまま静かである。

向こうは俺のことを見透かしているが、俺には楓が何を考えているのかは分からない。

しかし、信じていいのかどうか。

刹那を助けるためなら、それに乗るのは当然の話。

だが、弱みに付け込んでの事だ。

「はっ!俺の答えは決まっているぜ!」

俺は自分の苦しみを吹き飛ばすように大声を出す。

「俺は楓や刹那の約束を守る!だからこそ、あんたの誘いにはのらねえ!」

楓も立ち上がり、背中を向ける。

「そちら側が少しでも譲歩があれば、考えても良かったんだがね。真に残念だよ、牙狼」

婚約といっても結婚とは違う。

同棲はありだと思うし、そこから結婚するのもありだ。

しかし、今まで話したとおり、楓に今の生活を捨てて最初から向こうで住めというのが難しい話だ。