第七世界

「私は彼女の事を君よりも見てきたつもりだ。今後とも彼女を見ていきたい、そう思って、今回見合いの場を設けた」

見合いが悪いわけじゃない。

でも、今までこの男は何をやってきたのだ。

「そりゃ源氏物語もいいところだな」

いつの頃からかは知らないが、今と昔とではまた違うだろう。

人間と吸血鬼、種族は違うが意志がある。

意志のある者は身も心も成長するものだ。

「俺は、あんたの覚悟が薄いと思ってるんだよ」

「何?」

「一族の繁栄を願うってのは悪いことじゃない。あんたにはあんたの立場っていうものがあるからな、それを捨てるってのは中々難しいと思うさ。だがよ、楓が欲しいっていうのなら、相応の代償は払わなけりゃならない。そうじゃねえかよ?」

「私に一族を捨てろというのか?」

あくまで相手は癇癪を起こしたりはしない。

「あんたは見たところ吸血鬼の世界で暮らしているようだが、楓の環境に合わせる努力をして人間の世界に来なくちゃならない。だが、それは故郷を捨てることと同義じゃない」

楓は多少なりとも支援はあっただろうが、単身で人間の世界に来た。

其れくらいのことは、大の大人で男なら出来ない事はないだろう。

「楓は相当なわがままだ。自分のライフスタイルを変えるなんて、天地が逆さまになっても思いつかないんだよ」