第七世界

俺は楓の隣に座る。

相手は前に座ってはいるが、嫌な感じが拭い取れない。

「さて、君は鷹威恭耶という名だったかな」

「そうだぜ」

俺の情報まで出回っているのか。

「君がここに来た目的は、さっき言っていたあれだと?」

「ノーといってくれりゃさっさと、俺は学校で授業を受けられるんだけどよ」

今日は平日で学校がいつも通りあるのだから、単位が減っているに違いない。

「うむ、君の授業のことはさておき、君は彼女とは親しい間柄ではない、そう思うのだが、ここまでする理由は何か?」

「親しいよ。無駄に愛の鞭を頂けるほどにな」

恋人の親しいとかとは別だが、俺と楓との仲が親しいという言葉は言いえて妙である。

「うむ、皆木さんに頼まれた、か」

「知っているなら最初から理由なんか聞いてるんじゃねえ」

言葉を発するだけでも疲労を感じるんだ。

これ以上、説明をする気力もほとんどない。

「皆木さんは、何故この男性を選んだ?」

「こいつといると面白いからな。おもちゃとしては飽きない」

「おいおい、いつから玩具に降格したんだよ」

人間としての扱いをしろと紙一面に表記された嘆願書を出したい。

嫌な感じはするが、楓よりもまともな思考をもっているのでは、思ってしまう。

「君は何も理解していないな」

楓が人差し指を立てて左右に揺らす。

「何だよ?」

「あの時、嫁にいかせたから、俺の周りは随分静かになったなあと思うことになるぞ」

「それは安息の地を手に入れたという事なんじゃねえのかよ?」

逆に喜ばしいことだ。

暴力の街から開放されたのだからな。