第七世界

「立ち聞きか?」

俺が聞き耳を立てているところで障子を開けたのは吸血鬼に一族だった。

一族の男の身長は百八十前後。

赤い瞳に肩まである黄金の髪。

西洋を思わせるような綺麗な顔つきではあるが、好きにはなれそうにない。

奥にいるのは楓だけだ。

梓さんとボディーガードの姿はなかった。

「出来れば一度で聞き入れてくれりゃ、ありがたいんだが」

男は黙ったままである。

「この見合い、なかったことにしてくれねえか?」

もう少しましな手順があったかもしれない。

しかし、今はそんな余裕はない。

「彼らからの忠告は聞かなかったのか?」

「聞いたさ。だが、俺にも約束があるんでね」

吸血鬼は静かに、俺を見ている。

「中に入りたまえ」

唐突に出てきた言葉に俺は呆気を取られた。

「何?」

「君は立っているのも辛いんだろう?」

俺の様子を見かねた言葉なのか。

男は障子を開けたまま奥へと入っていく。

楓を見ると、首を横に動かし中に入るように促す。