第七世界

俺はおぼつく足取りで、楓の元へに急ぐ。

ティーナさんが何もいわなかったのは珍しい。

単に、今の状況で何を言っても行ってしまうから言わなかったのかもしれない。

「気を使わせただろうな」

病とは違うが、苦痛に悶えてる人間を目の前にして何もしない自分がいるのは、堪えるだろう。

ティーナさんは、そういう人間像が俺の中にある。

廊下を歩いていると、声が聞こえてくる。

「私は一族の繁栄を望んでいるのです」

男の声だ。

どこからだろうか。

俺は耳を澄ませ、居場所を特定させる。

「あなたには私と共にきていただきたい」

もう少し進んだ先にある障子に仕切られた部屋から聞こえてくる。

俺は足を進め、部屋の前に到達した。

「私には興味はないんだがな」

即答だった。

「だが、君の母上はそれを望んではいない」

梓さんの考えとしては、娘をどうにかして一族と結ばせたいというところだ。

ただ、本人はそれを望んでいない。

「母の言う事を聞いて嫁にいけと?そんな古臭い習慣に捕らわれるつもりはないさ」

「うむ、困ったね」

現代世界に精通していないのか、一族の吸血鬼は今の考え方とずれているのかもしれない。