業者が運ぶ様を見守る女性と目があう。

女性から先に笑顔で会釈してきた。

顔を見た瞬間、心の鐘を打たれたが、平全を装って会釈した。

その後も声をかける事もせず、窓から見下ろす。

すると、女性が手招きしており、迷いながらに外へと出た。

正直、初対面の人間とあまり話す事などないし、中学生の俺は他人に興味を持てなかったからだ。

「何っすか?」

傍に寄れとさらに手招きする。

疑わしい目を向けながらも近寄ると、待っていたものは拳骨。

「いってえええ!いきなり何すんだよ!」

普通の拳骨より痛い。

頭のツボを理解している殴り方だ。

「見てるんなら手伝え、少年」

初対面の人間を殴って、手伝わせるのは暴挙の他に思いつかない。

「やだね」

係わり合うとろくな事にならないと、足を家に向けた。

しかし、一向に前に進まない。

何故なら、襟首をもたれているからだ。

「離せよ」

「後でお茶ぐらいは出すぞ」

「いらないから離せって!」

男の力をもってしても、離す事が出来ない。

恐ろしい馬鹿力の持ち主なのか。

女性を殴るのは不本意だが、逃げ出す事のないもどかしさと焦燥から拳を振った。

いとも簡単に首を曲げて回避される。

「女を殴ろうとするなんて男としては減点だ。点数がゼロになったんだ、罰として手伝え」

「だから嫌だ、うご」

女性が鳩尾にボディーを3発ヒットさせる。

「いつまでも駄々をこねるんじゃない!」

明らかにおかしいのだが、女性が怒鳴り散らす。