「はあん、ふうん、まあ、見合いすればいいんじゃねえの」

俺は地面に放り投げる。

「何で俺に相談するんだよ?何か断れない理由でもあるのかよ?」

「まあな」

楓にしては、歯切れが悪い言い方だ。

痛いからだを起こして、部屋の真ん中に寝そべる楓に向き直る。

「というか、リラックスしすぎだろ、おい」

「いいじゃないか。君と私の仲なんだし」

いじめっ子といじめられっ子の仲だろうが。

「はあ、で、楓よ、俺は何をすればいいんだよ?」

「君にしては話が分かるな」

楓が出来ない事なんてそうそうない。

むしろ、断るなら、すぐにでもしてるだろうしな。

だとすれば、相手は楓より立場の大きな者になる。

親か職場の上司だろう。

「あのな、もう、お前と出会って三年になるんだぜ?それくらいの事は分かるっつうの」

そう、アレは中学の時だった。

回想が入るが長くないので悪しからず。

その時から親の出張が多くて一人だった俺は、昼まで眠ろうと思っていた。

丁度、休みだったしな。

しかし、休みの日に限って、眠れない事とかよくある話だ。

隣が騒音のせいで、朝に無理やり起こされた。

「休みの日なのに、何なんだよ」

苛立ちを隠さずに、カーテンが外れるような勢いで開く。

隣の家の前にはトラックが一台、停車していた。

トラックのロゴを見ると、誰かが引越ししてきたのだと分かった。

「誰か引っ越してきたのか」

少しだけ窓から顔を覗かせる。

荷物を運ぶ業者と、業者の他に目立ってる人がいた。

年齢は二十代で、赤髪を持ち白衣を着ている。

誰もが目を引くような綺麗な女性だ。