第七世界

「刹那の野郎、俺を見捨てやがって」

廊下を歩きながらも悪態をつく。

しかし、刹那の様子が少しばかりおかしかったような気がする。

朝の一件があってからは、普通だ。

しかし、犬子が現れてから、少し変になっていた。

犬子に何かを感じたのか。

いや、そうじゃないよな。

だとしたら、佳那美の時点でそうなっていてもおかしくはない。

何故ならば、犬子と佳那美は同類であるからだ。

「いや、性格は少し違うか」

犬子の積極性は佳那美にはない。

しかし、佳那美のSな気質は犬子には足りない。

二人は似て非なるものなのである。

「はあ」

考えるだけで頭が痛くなってきた。

周りの女達が変態なせいで、俺の未来が危ぶまれてしまう。

いや、そんな変態な女達よりも、ちょこっと変態な刹那の事を考えないと。

根本的な原因を知らない限りは、どうしようもないんだよな。

自分は鈍感というほどでもない。

ただ、言いたい事を我慢できないタイプなんだ。

「それはさておき」

刹那が俺に対して気があるかどうかというところだ。

ないというのなら、最初からもっと疎遠になってもいいんだよ。

あんなに俺に対して暴力を振るう事もないし、本当なら今みたいな状態でもおかしくはない。

もしかして、このまま行けば、俺は殴られずに済むんじゃないのか?

それはラッキーといえば、ラッキーだよな。

肉体が崩壊することはなくなるんだからな。