二人は何かを話しているようだが、俺は気にせず飯を食う。

「でさ、恭耶、今日空いてるよね?」

「はあ?」

「犬飼さんが今度から知り合いのお家に住むことになって、ここら辺の事、知りたいんだってさ」

「佳那美、お前のほうが仲がよさそうなんだから、お前が案内すればいいだろ」

とてつもなく面倒くさい。

今以上に付きまとわれるのも、俺自身の行動が限られてくる。

「今日は、バイトなんだ」

「また、破廉恥喫茶でバイトするのか」

「よからぬ噂が立つような事、言わないでくれるかなあ?」

「いたたたた!」

俺の太ももをつねってくる。

誰も見ていないところからの攻撃とは、陰湿すぎる。

刹那よりも性質が悪い。

「お前な、他の客もそう思ってるぞ」

「そんな事ないよ。とても、可愛いと思ってくれてるもん」

勘違いする奴っていうのはどこにでもいる。

佳那美に限って夜道に襲われるという事はないだろう。

逆に、夜道で襲った人間が殺されてしまう。

しかし、裏の顔を知ったときに、客は逃げていくだろうけどな。

「で、恭耶、どうなの?」

犬子が今か今かと答えを待っているようだ。

「ああ、今日は無理だ」

都合がいいのか悪いのか。

今日は楓にボランティアをしなければならない。

「悪いな」

飯を平らげた俺は、そそくさと立ち上がる。

他の二人はまだ食べ終えておらず、何とか逃げ出す事に成功した。