「こっちの人は誰?」

佳那美はカレーを食べる手を休め、水を口にしながら俺に聞いてくる。

「犬飼犬子。今日から恭耶のクラスメイトなの。あなたこそ誰?」

答えたのは犬子自身だ。

「私は2年A組の亜双佳那美よ」

二人の間には何か凍てつく物を感じた。

二人は本質は同じ吸血鬼ではあるが、少し質が違う。

とても、居づらい気分だ。

何故、最初に席に座っていた俺の肩身が狭くなっているんだ。

余計な事を言わず、さっさと平らげる事にした。

「ごちそうさま」

唯一の助け舟である刹那が先に飯を平らげてしまう。

「刹那、待つよな?」

「ボクも忙しいんや」

席を立ってしまう。

「どこが忙しいんだよ。教室に帰るだけだろうが」

「恭耶には関係あれへん」

刹那が遠ざかるところを追いかけようとすると、犬子が俺の服のすそをつかんだ。

「何すんだよ?」

「恭耶はまだ食べ終わってないじゃん、ゆっくりしていきなよ」

「アホか。俺にも事情というものがあってだな」

しかし、犬子の力が強くて動けずにいた。

「鷹威君、刹那と何かあったの?」

「何もねえよ」

説明すると、鬼の力でどうにかされてしまうだろう。

そんな気がした。

俺は飯を平らげることに集中する。