目を覚ます。

夢の内容が思い出せない。

不思議なことに、目から涙が流れている。

でも、深く考えないようにして、涙を拭いて周囲を確認する。

倒れた場所と違っていたが、何処なのかは理解出来た。

一面白で囲まれた何も入り込む余地のない聖域、保健室だ。

「誰かが運んでくれたのか、ん?」

足の重みが気になり視線を移すと、椅子に座った状態で上半身だけベットに乗せている佳那美がいる。

幸せそうな顔して寝ている。

女の子の笑顔で俺も気分が良くなる。

綺麗な髪に誘惑され、頭を撫でてみたくなる。

軽く撫でてみると、髪の質の良さに心地よさに癒される。

永延と撫でていたかったが、起こしてしまいそうだから止める。

「ふう」

手に違和感がある。

綺麗に包帯が巻かれているようだ。

最初は佳那美がやったと思ったけど、佳那美は不器用から数えた方が早い。

多分、先生がやったんだろう。

一息つき、佳那美に震動を与えないようにベットから降りた。

佳那美に隣のベッドの掛け布団を上からかけてやる。

立っているのは疲れるので、俺も余った椅子に座る。

「何時間寝てたんだろうか」

時計の針はすでに放課後を差している。

気付くと、保険室内に朱の光が差し込んでいる。

夜更かししたつもりはないが。爆睡してしまったようである。

「海江田の野郎、もうちょっと手加減しろよ」

完敗だった。

海江田はまだ本気を出していないのだろう。

不甲斐無い自分に腹が立つぜ。

「今の俺じゃ勝てないか」

楓が来てくれなきゃ、病院に直行してただろうな。

後で楓に礼でも言っておくか。