破天コウ!

「悪い、今なんて言ったか、もう一回言ってくれるか? おれの至極常識的な出来の悪い頭ではどうも理解できなかったらしい」

 きっとおれの聞き間違いだと考えて、おれは彼女に言った。

 しかし。

「だから、あたしの下僕になる気はない?」

 何の躊躇いも無く、彼女は言い放った。

 やっぱり、こいつ、頭の中に埋め込まれてネジが一本、何処かへ飛んで行ってしまっているのかもしれない。

 いや、一本でなく、二三本いってしまっているのかも。

「何のつもりかは知らないが、そんな女王様ゴッコに付き合っている暇はおれには更々ない。つゆ、あらず、だ」おれは面倒に思いながらも右手をヒラヒラと彼女に振った。「他を当たってくれ」

「そう、残念ね。せっかくのあたし直々の提案を無下にするなんて」

 彼女は溜息を一つ吐いてから、見るだけで眩暈を覚えるような数式を再び書き連ね始めた。

 残念なのはお前のその頭の中身だよと言ってやりたかったが、面倒なことになるのは火を見るより明らかだったのでやめておいた。我ながら懸命な判断だ。

 腕時計に目をやって気付いたのだが、おれが睡魔のやろうに敗れてダウンしていたのはほんの一時であったらしく、しかしおれの脳内は一点の曇りもない程にすっきりしていた。