夢と現の狭間で揺れているおれではあったが、いくら考えていてもらちがあかないので、とりあえずシャワーを浴びてから愛チャリ――まあ要するに普段乗る自転車だ――『赤い彗星』に跨った。

 一番大きな『中央キャンパス』を囲むように、道路を挟んで立つ『東キャンパス』、『南キャンパス』、『西キャンパス』、『北キャンパス』、計五つのキャンパスからおれの大学は構成されている。

 東、西、北、それに中央キャンパスにはそれぞれにいくつかの学部の研究室やら教室やらが振り分けられている。本来、おれの属する工学部は、法学部と経済学部ととともに中央キャンパスで授業ないし研究を行う。

 だが、一年時は専門的なことは殆ど学習せずに一般教養科目によって時間割のほぼ全てが占められている為に、一年時は全員が南キャンパスで大学生活の大半を過ごす。

 だから、おれは赤い彗星を走らせて南キャンパスへと向かった。

 いやしかしなんとまあ自転車の数の多いこと。おれの大学は、敷地面積がちょっと自慢出来るくらいに広いので、授業の合間の休み時間に教室を移動するだけでもそれ相応に骨の折れる作業であるらしい。

 なので、学生の多くは自転車でキャンパス内を駆け回るのだ。