夢――だったのか?

 見覚えのある、真っ白い天井が広がっていた。その中央には、これまた見覚えのある円形の蛍光灯。

 目を擦りながら、上半身を起こす。周囲を見渡すと、見覚えのある机に見覚えのある液晶テレビ、それに、見覚え
のある本棚。

 どう見ても、そこはおれの下宿先であった。

 蜂蜜が大好きな、大人気なクマのキャラクター『プー太郎』のデザインがあしらわれたお気に入りの枕の横で、赤色の携帯が陽気に歌を流していた。

 メールの受信音だ。どうやら、この音で目覚めたらしかった。

 ゆっくりとベッドから腰を上げながら折り畳み式の携帯を開く。金曜に連絡先を交換したばかりの、タカからのメールだった。

 てっぺーとタカともに一時間目は遅れるから席を取っといてくれとの内容だった。

 昨日、どこかのサークルの夜通しの飲み会で今しがた帰ってきたらしい。授業初日から遅刻だなんてなかなかの根性をお持ちのようだ。

 ついでに携帯で時間を確認すると、午前七時を過ぎたところだった。一時間目の開始には、まだ一時間半以上余裕がある。

 おれは立ち上がり、洗面所へとだらだらと向かった。使い始めたばかりの青い歯ブラシに歯磨き粉を付け、口に突っ込む。