集合場所である近くの神社に着くと、先輩方が一週間前から徹夜で交代々々、ずっと取っていたらしい、見事に咲き誇る桜の木の下へと案内された。

 既にミリちゃんは着いていたらしく、もう輪の中に溶け込み、他の新入生たちと仲良く話していた。おれは違うグループに加わるよう指示され、その場所に座った。

 なんとまあ、見事な桜。そして、なんとまあ皆様の桜に対する見事な無視っぷり。所詮、花見なんてものは桜を口実にお酒を楽しく飲む為だけのものなのである。

 あわよくばミリちゃんの横に座ってもっとお近付きになりたいところではあったが、やはり世間の風というものは冷たいもので、なかなか思うとおりにはことは運ばない。

 新入生、先輩関係無く大人気であったミリちゃんとは花見中は結局一言も話せず終い。

 日が傾き、その場もお開きとなったところで、二つ三つ言葉を交わせただけだった。

 先輩方に連絡先を教え、近いうちに一度練習にも行きますと伝えて、帰路に着いた。そして、今に至る。

 この川沿いにも、神社の桜に勝るとも劣らない素晴らしい咲き様を披露する桜たちが並んでいる。

 生まれてこのかた、こんなにも見惚れてしまうような桜には出逢ったことがなかったおれは、一本一本丁寧に見上げながら、夕陽を浴びて歩く。