そして、こんな設定もあった。

 おれは生まれた時から何かが左手に取り憑いていて、その何かと同種の存在が近寄ってくれば、その左手が疼き出すのだ。

 そう、あくまで“設定”である。

 夜、墓場の近くで友達と遊んでいるときに、左手をおもむろに掴んで、「くそっ……またかっ!」などと叫ぶのだ。

 更に、おれは自分自身が素晴らしい才能に充ち溢れていると信じていた。

 物語を描くことに関してのおれの才能は、他の子供たちを遥か凌ぐと信じ切っていた。

 某海賊漫画すら凌ぐ面白い物語を描けると思っていたから、将来は漫画家に絶対になれると確信していた。

 だから、まさに中学二年生のときにおれは全力で漫画を描いていた。おれの全てを、ぶつけて。

 そのとき描いていた漫画のタイトルは全く覚えていないし、内容も殆ど頭の中から消え去ってしまった。

 確か、生徒会長である女子高生が魔法を使って平和を護るなんていうふざけたストーリィだった気がする。

 まあ、とにかく。
 痛い、痛すぎる、最早、イタい。実にイタい。イタいったらありゃしない。その痛さったらまさに生きたままに両手の小指の爪を剥がされるが如し、である。

 爪なんて剥がされたことがないからどれだけ痛いかなんて知ったこっちゃないけれど。