一生に一度の、大学の入学式は殆ど何も記憶に残らなかったと言ってもいい程に退屈極まりなく、かつ、印象に残らないものだった。

 グダグダに次ぐグダグダ。

 何となく締まりのない、吹奏楽部の演奏に始まり。

 多忙過ぎて、大学に姿を現すことすら滅多にないと言われる、大学長の挨拶。お決まりの、内容。桜が咲き乱れるこの季節に云々。君らは日本の未来を背負って云々。

 その後、来賓の方々からのご入学おめでとうございますだのなんだののありがたいお言葉が御座り候。

 思えば、結構タメになることもそこそこに言っていたのかもしれない。

 だがその内容は、ときどきおれの脳の端っこをつつくだけのようなもので、おれの思考を刺激するようなものではなかった。

 それはまさに、指先が不器用すぎるおれの箸の隙間を流暢にすり抜けていく、真夏の流しそうめんの如しであった。いとおかし。

 そうなった理由は単純明快である。

 おれの思考回路は、完全に先程の出来事に支配され切っていたのだ。

 一瞬の眩暈の後に現れたあの金髪金眼の少女は一体何だったのだろうか? 世界が廻り出すだとか、そんなことを言っていた。

 あの少女は、頭がイカれていたのだろうか――。世界は始めから廻っているに決まっているではないか。