「ねえ」

 駅までの道程(みちのり)、無言で運転する彼に声を掛けた。

「なんだね」

「傭兵のパスポートって、どんなの?」

「見たいのか」

 小さく溜息を吐いて、ごそごそとバックポケットから薄く小さな冊子を取り出し少女に手渡した。

「名前と、顔写真だけ……?」

 怪訝な表情の少女からすぐにパスポートを奪い取る。

「私は特別なのでね」

「それだけで通れるの?」

 応えるように笑って少女を一瞥した。

 思ったほど意外なパスポートでもなかったな……と自分のシート側の窓を開く。

「ん~気持ちいい」

 車は最低だけど……と思いつつ、これからの事に胸を踊られた。