そして目を据わらせてゆっくりと荷物を指さしながら発する。

「これを、一体、誰が持つのだ」

「あ」

 一人旅だという事を忘れていた訳じゃない。

 しかし生まれてからずっといる周りの人間の事を無意識に考えてしまうのは仕方のない事だ。

「3分の1に減らせ」

「ええっ!? 無理よ」

「ならば旅行は諦めろ」

「そんなっ!?」

 彼女の抗議も虚しく彼はそう言うと無表情で部屋から出て行った。

「なによあれ……」

 ベスはあっけにとられ閉められたドアを見つめる。

「なんなのよあいつ! すっごいエラそうにさっ! 雇われのくせにーっ!」