青年の右ポケットから滲む、赤い染み。
青年はポケットの中に手を入れ、染みの正体を取り出しました。




白いハンカチに包んだ、小さな木の実が潰れて汁が出ていたのです。



少女は我慢が出来ず、お腹を押さえ笑い出しました。


「………っ、もーだめーっ!あはははは、あなた。可笑しすぎるわ!」



そして、少女はポケットから銀細工の施された手鏡鏡を取り出し、青年に渡しました。


「次居眠りする時は気をつけなさい、ピエロさん?この街の子供たちは、イタズラ好きなのよ」



少女は無邪気に笑い、悪びれる様子もなく告げれば颯爽とその場を去りました。




「………何で私がピエロ…………ああ、なるほど。こりゃピエロに違いない」


青年は渡された鏡で顔を見て、思わず吹き出してしまいました。
白く塗られた肌、赤い紅を付けられた頬と唇。
そして赤く丸い鼻を付けられて。


しかし青年は、不思議と機嫌は悪くありませんでした。






―――――愛らしい少女の笑みを、青年は近くで見られたのですから。