「…うるせぇ。前向け。」

「…あっ!蘭、未来チャン髪耳にかけてる!!か~わ~い~」

この男、孝太とは昔からの腐れ縁。

しかも俺が相沢に片想いしてる事を知る、唯一の存在。

普段ヘラヘラしてる癖に妙なところで鋭くて、
暇さえあれば、ヘタレだなんだとおちょくってくるムカつくヤツだ。


「…うぜぇ。
も~お前まじで前向けって!!」

「あーあー。まさか、あの高山君がね~。いつも女子にワーキャー言われてる高山君がね~。好きな女の子に声もかけられない純情ボーイだったとはね~。イヤイヤ実に信じられん。ま・さ・か!ただのヘタレ君だったとはね~」



………コイツ…、
いつか絶対殺す…ッ!!



「ま~、そんなどうしようもないヘタレ君に、
この心優しい孝太様がチャンスをくれよう。」

「…は?」


そう言うとバカは前を向き、自分の机の中をあさりだした。


「……お。あったあった!」

バカは再び振り返り、「ジャ~~ン!!」と目の前に何かをつきだした。


そこには
数学Ⅲと書かれたB5サイズの冊子。
どう見ても普通の数学の教科書だ。