「一回だけ…」


隣の百合の花に手を伸ばしながら、あたしは呟くように言う。


「え?」


裕美が聞き返す。


あたしは伸ばした手を引っ込めて、ゆっくり息を吸う。


「一回だけ、凄く落ち込んだことがあるんだ。凄くお姉ちゃんを羨んだ」


あたしの顔を見て、裕美はゆっくり頷く。


「そっか…」


それ以上は聞いてこない。


その辺にある綺麗な花を選び取る。


横から違う子が、さっきあたしが取ろうとした百合を取る。


それを見た裕美が聞いてくる。


「一本いる?」