―ガラッ


息を切らせて、あの教室のドアを開ける。


「北沢くん?」


見た感じでは人のいないような教室に呼び掛ける。


―ガタッ


教卓の影から物音がして、北沢くんの姿が見える。


彼は微笑んで口を開く。


「来てくれないかと思ったじゃん」


何だか胸が一杯になって、あたしはただ首を振った。


そんなあたしを北沢くんは手招きする。


あたしはゆっくりとそこへと近づく。


あと1メートル。


そんな距離で彼は教卓の影から何かを取り出す。


「ハッピーバースディ」


差し出されたのは、小さな小さな霞草のブーケ。


「何で?」


あたしはそれを握り締めながら聞く。


「好きだから」


…今なら信じれるよ。


この人はあたしを見ていてくれてるって。


あたしは堪え切れずに涙を流す。


彼は優しくそれを拭いながら言う。


「付き合って」


あたしはまた涙を流しながら頷いた。












―Fin.