腰の近くまであったあたしの真っすぐな黒髪。


今では肩下のふんわりしたウェーブ。


色は黒のままだけど、お姉ちゃんと間違われることはない髪型。


前髪も少し切って、視界も良好。


もう伸ばす必要なんてないから。


前を見なきゃいけないから。


ポケットで携帯が震える。


『もう吹っ切れたんだよね?』


送信者は裕美。


皆に聞かれたくないあたしを気遣ってのメール。


つくづく裕美はすごいと思った。


あたしは裕美に向かって笑いかける。


もう大丈夫の合図。


裕美も笑う。


そしてまたあたしの携帯が震える。


『今日の放課後、あの空き教室で来るまで待ってる』


送信者は北沢くん。


いまさら何?


絶対行かない。


あたしは返信せずに携帯を閉じた。