話を聞いたあたしは、果たして自分に何が出来るのか、何をすべきなのか考えていた。


悔しそうに唇を噛んでいた彼女は、毎日皋の体調を管理する仕事に居て、きっと、今までも人の死を身近に感じてきたに違いない。


そう言う仕事なのだから。


彼女はきっと、今までと同じように皋を見送るんだろう。


遣り切れないと思いながら。


力に成れなくてごめんなさい、と心で泣きながら。


医療・福祉に携わる人には、共通したものではないかと思う。


あたしは、まだ祖父も祖母も健在だし、身近な誰かの死を経験したことは無い。


命が無くなるということが、どういう事なのかを、あたしはまだ知らない。


ぼんやりと考え込んでいるうちに、時計は12時を回っていた。


「もう昼か……」


あたしは売店に行ってご飯でも買おうかと、丸椅子から腰を上げた。