☆★心風★☆

「あー、なんか思い出したような気がすんだけど…」



男子は実花ちゃんの真剣な瞳を見て、少し笑いながら言った。




男子は私のことをじっと見つめて、それから何かを確信したようにニヤッと笑いながら頷いた。




「お前、合唱コンクールのとき俺の隣だった…」



そこまで言うと男子はフッと吹き出して、柔らかな笑みを浮かべた。



その笑みは、あのときの陰険な笑みではなくて、心からの笑みだった。



そんな笑みにホッとして、全身の力が抜けた。




そして私の右耳に唇を近づけて、そっと囁いた…。




「あのときよりも、可愛くなったな」




…男子はそのまま私の横を通り過ぎて教室に戻っていった。