成人式の翌日だった。
あのときの事を私はしっかりと記憶している。実母と金銭の問題を電話で話していた、体中が熱を持ち手足が振るえていた。本当に何かの線が切れる・・・そんな感じだった。
私は確か言葉にしてはいけないような残酷で卑劣な言葉で実母を罵ったと思う。
「あなたは母親というよりも人間として最低だ」とか・・・それに似た悲しい言葉を私は発し続けた。勿論、実母も黙ってはいない受話器のむこうから罵声が飛んできた。
「てめぇは殺されなきゃ判らねのーか?殺すぞ」・・・女性が使う言葉とは到底思えないしましてや、母親が実の娘に対して発する言葉として、悪気が無いとか売り言葉に買い言葉とかそんな次元は明らかに超えているように思う。彼女の(実母)罵声はそういった残酷で卑劣な言葉で、かつ本当に果物ナイフを持って乗り込んでくるような人だった。
私はもう理性など失っていたのだろうと思う・・・「殺したきゃ殺せば?中途半端に殴ったりしてないで、さっさと殺せ」と言葉を返していた。なんて悲しい事だろう実の親子が心の底から憎しみあい罵りあっているなんて・・・彼女も私も求めても求めても愛情を手に出来なかった。
何故なら、望む愛情の形がまったく違っていたからだ、彼女は愛情をお金という目に見えるもので表した。
私は只傍に、抱きしめて欲しいと願いそれを愛情の一つとしている。
その場にいた主人が目を丸くして私の手を握っていた。
当然のことだと思う。私は声を荒げ人を罵倒などした事はなかった、性格はキツクはあるが比較的温厚なほうだった。

もう受話器から発する言葉も何も解らなくなった瞬間だった、私は耳にあてていた携帯を壁に投げつけ破壊してしまった。本当に破壊したのは自分の心だったのかもしれない・・・・