いつもの半分くらいの乗客者。

いつも見かける高校生の軍団はいない。

ガラガラの電車の中で、席を見つけるのに苦労はしなかった。

ドカンと席を占領し、バッグのサブに入れてあった参考書を取り出した。


「休みの日に、模試なんかいれんじゃねーし」


と、一人で文句を言いつつも、すでに目はしっかりと解説を追っていた。

付箋を付けてあるページの解説を片っ端から頭に入れていく。



ふと、時間が気になり携帯を取り出す。

ディスプレイには7時46分との表示。

あと2分で発車する。

携帯をポケットにしまい、また視線を参考書に戻す。

発車を告げるアナウンスが終わり、ドアが閉まる。

騒がしい音を出しながら一人、俺が乗っている車両に乗り込んできた。


「お。秀才君ではないですか」


毎度聞き慣れた声。顔を見なくても分かる存在。


「ん、苦しゅうないぞ。近こう寄れ」

「って、お前は殿様かよ」


爽やかに笑うこの男は、俺の幼馴染。

サッカー部に所属していて、2年生期待のエース。

何かの選抜選手とか、らしい。その辺は、よく分からないけど、確かに凄い選手ではある。

よく校内新聞とかで取り上げられている学校のスターでもあったり。