「それくらいでいいだろ、龍一?」



そこで初めて笹山大和組長が執事に声をかけた。



瞬時に左手を離す執事。


私は、執事の左腕にぶら下がったままだ。




執事は、左腕にぶら下がった私を、ゆっくりと床に降ろし、一瞬だけ私に微笑む。


そして、笹山大和組長の方を向くと、

「お騒がせ致しまして申し訳ございません。」


と、深く頭を下げる。



「あっ?別に面白かったからいいよ。みんな、さっさと食えよ。」


笹山大和組長は、執事の謝罪には興味なさそうに見向きもしない。



笹山大和組長の一言で、まるで何もなかったように、場は元通りになっている。



「小夜さん、それでは仕事に戻りましょう。」


執事の周りの空気も元に戻っている。


「はい。かしこまりました。」


私は、最初と同じように元の壁際に戻っていった。



それからは特にトラブルもなく、食事の時間が終わった。