さうす・りばてぃー

「落ち着け。二人はどこに行ったのか、話してくれ」

「さ、散歩に。散歩に行くといって、七時過ぎくらいに出かけました」

「何だって?!」

 俺たちはほぼ同時に声をあげた。

 この風雨の中、散歩に行った?

 そりゃ、七時過ぎなら雨はまだ降っていなかっただろうけど。

「風に当たりたいって言って、出かけたんです。八時前には戻るからって。私も誘われたんですけど、眠かったんで、寝るって言って断りました」

 見由は手足をばたばたと動かしている。

 どうやら嘘ではなさそうだ。

「おい、やべえぞ」
 達也が真剣な表情でそう告げた。

 雨は徐々に強くなってきている。この分では、近いうちに大雨になる。

 山だけに、うかつに歩いたらまずいことになる。

「台風が来るって言わなかったのか?」

 俺は焦りつつ見由に聞いた。

「つい言いそびれちゃいました」

「バカッ!」
 俺は思わず叫んでいた。見由がびくっと体を硬直させる。

「よせ、今見由ちゃんを責めたってはじまらん。それより、すぐ探しに行こうぜ」
 達也が俺の肩に手を置く。

 その表情は、もう一刻の猶予もないことを俺に告げていた。

「ああ、そうだな。ごめん、見由」

 俺が言うと、見由は首を横に振った。