さうす・りばてぃー

「えっと、昨日ずいぶん迷惑をかけたみたいなんで、謝っておこうと思いまして」

「なんだ、記憶はあったのか」

 俺が聞くと、見由は首をぶんぶんと横に振った。

「穂波さんに聞いたんです。私、まさかあそこまで酔っ払うなんて思ってなくて。あんなに飲んだの初めてだったんです」

「そか。まあ、上がれよ。お茶くらい出すぞ」

「ありがとうございます。じゃあ、お邪魔します」

 見由はそう言うと、奥のほうに入っていった。そして、こたつの一角を占拠する。

 俺はお茶というか、ウーロン茶を温めた。ペットボトルからやかんに注いで温めるだけという、ごく簡単なお茶の沸かし方だ。面倒なときはこれに限る。

「ほれ」

 俺は見由の前に茶の入った湯のみを置いた。湯気が温かそうに舞い上る。

「いただきます」

 そう言って、見由は茶をすすった。

「熱っ!」

 いきなり咳き込む見由。そんなに熱かったかな? 一応冷ましたつもりだったが。

「悪い悪い。熱かったか?」

「私、猫舌なんですうー」

 見由は舌を出しながら言った。犬が体温を下げるときみたいだ。見ていてちょっと面白い。

 見由は、お茶にふうふうと息を吹きかけて、懸命に冷ましている。甘い物好きで辛い物好きなこの子も、熱いものは苦手だというわけか。