「あー……それは、つまりだな」

何かを一生懸命に説明しようと、マコはさも賢い口調を演じる。

校則に違反しまくっている彼の外見では、お世辞にも賢いとはいえないわけだが。

「友達としての好き、と恋愛対象としての好き、ってことだよ。つまり、愛してる」

まるで小難しい理論を語るかのように、マコは明らかに考えながら語る。
素人の弁論のようだ。

「友達としての好きってのはわかるだろ?愛してる、ってのは……とにかくその、特別なんだよ。もっと一緒に居たい、とかもっと話したい、とかさ。一人の相手に限定されるんだ」

考えながら話しているにも関わらず、中々に筋が通った考えだと思った。

……特別な一人、か。

私には居るのだろうか。
その、特別な一人とやらが。

「例えば俺の場合……」

俺の場合。

その言葉が少しだけ気になって私はマコと視線を合わせた。

マコにも好きな人が居るのだろうか。

「な、なんだよ。いきなり」

「俺の場合、誰?」

「い……いや、何もないし」

「居ないの?好きな人」

「居ねーよ!」

マコは急にムキになってそっぽを向いた。
何だこいつ、いきなりムキになって。

そうか、居ないのか。好きな人。
私はその言葉に少しだけ安心した。何に安心したのかはわからないけど。

「……お前はどうなんだよ」

「何が」

「好きな奴、居んの?」