そう思うのに、足が動かない。

立ち止まる女は通行人の邪魔となり、すれ違う人の鞄が身体にぶつかった。

……惨めだった。

簡単に片づけられてしまうことが、私の思いも軽く扱われているようで、ゴミ箱に捨てることが躊躇われる。

かといって、未練がましく持ち帰る訳にもいかないだろう。

 付き合って一年。

長いのか短いのか。

でもあつし君に捧げた思いは、ゴミ箱に捨てて終わりにできるほど簡単なものじゃない。

ふらふらと道沿いに伸びるガードレールへ歩み寄り、私はがっくりと項垂れた。

「センスない、かぁ」

この一年間、散々言われてきた言葉である。

なんとか彼の好みに近づこうと努力した日々は、結局なんの効果もなかった。

あつし君と出会ったのは、会社の同僚に誘われて参加した合コンだ。

顔は知っているという程度の付き合いでしかなかったが、急に不参加のメンバーが出たからと、頼み込まれて参加したのだ。

たいして仲良くもない人間にまで声をかけて、メンバーを集めなくてはならないのかと驚いたが、参加して納得した。

声をかけてきた同僚が、参加したメンバーの中で一番美人だったのである。

要は引き立て役が一人でも多く欲しいだけだったのだ。

腹は立ったがしかし、同僚の気持ちもわからないでもない。

なんとその合コン、男性は全員読者モデルという、超ハイレベルクラスが集まっていたのだ。

そしてあつし君も、読者モデルメンバーの一人として参加していた。