私にはどこがどう悪いのかが分からないけど、読者モデルとして流行の最先端にいるあつし君が気に入らなかったのだから、きっと何かがダメなのだろう。

 きゅっとシャツを握りしめた私に、男は不思議そうな表情を向けてくる。

「洗えば着られる。それに……さっきの男が何て言ったのかは知らないけど、俺はそのシャツ、悪くないと思うよ」

 軽く首を傾げた男は、人の好みってだけの話だろう、と面白そうに笑った。

「どんな服だろうとさ、お前がいいと思って選んだのなら、それでいいんじゃない?」

 男の口からさらりと出てきた極論。

彼の言葉はとても単純だが、そうかそれならいいかと、すんなりと受け入れることができた。

その言葉振りから、彼が本心からそう思っているのだと気づいたからなのかもしれない。

見失いそうになっていた私の心が、拾われた気がする。

尽くした一年間が、相手は違えどようやく報われたような、そんな気持ちに包まれたのだ。

ほろ、と涙を零した私に男は眉を上げると、次いでにやりと笑みを浮かべる。

それは今までのどこか冷たく感じる表情とはまったく異なる、挑発的な笑みだ。

そうした表情は男の魅力をより一層引き立てているようで、私は目を逸らせなくなる。

「でも、タダで譲ってもらうのは申し訳ないから……そうだな。交換条件として、俺がお前に力を貸すよ。こっ酷くお前を捨てた男に、反撃してやろう」

「はん、げき……?」

 呆然と呟くと、男はさらに笑みを深める。