壊したい程愛してる

彼は心音が泣き止むまでただそばにいてくれた。

それだけの事が凄く嬉しい…。



「はい。オレンジジュースでいいか?」


「あっありがうございます…っ」


泣き止んだ心音にオレンジジュースを渡す青年。

心音はドキドキしながらまじまじとそんな彼を見つめてみた。



明るい茶色の髪の毛。

整った顔。

…かっこいい…。


本当王子さまみたい…。

ぽわ~としたまま、こくんとオレンジジュースを口に運んだ。


青年はコーヒーを隣で飲んでいる。


な…何か話さなきゃ!!

「あ…あの…」


「ん?」


「こっコーヒー美味しいですか?


あっあ…!テンパっちゃったっ…」


こんな事が聞きたかった訳じゃないのに!


あわあわと慌てる心音を見て青年が吹き出した。

「ぷっ。あんた面白いな」


「そ…そんな事ないです…あっあのお名前は…」


青年がコーヒーを飲み干し、数メートル先のゴミ箱に缶を投げた。

カラン!

いい音と同時に立ち上がる青年。


心音を見おろしながらニカッと笑う。


「空。瀬田空」




これがあたし桜井心音と瀬田空の出会いだった。