セクハラ彼氏は会社の上司


「ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって」


申し訳なさそうに謝る秋さんに、『いえ』と両手を振ったあと、疑問に思っていたことを尋ねてみた。


「なんでそんなに結婚したくないんですか?」

「したくない訳じゃないんだ。勝手に決められるのが嫌なんだ」


前を見ながら秋さんは言った。

でも、あたしは“偽”でこれが終われば“彼女役”も終わる。


そしたらまた、お母様は新しい結婚相手を探すことになる。


この作戦も無意味なのに……



「それに、本当に玲那ちゃんと結婚していいって思ったし」

ニカッと悪戯っぽく笑ったあと、なんちゃって、と付け足した。


それを見たあたしは

「もう!!冗談は止めて下さい!!!」

と秋さんの腕をパンチしながら、ドキドキなる胸をごまかすしかなかった。