橋の真ん中に、一本の長いロープが落ちている。
いつからそこに落ちているのか、わからない。
ともかく、一本の長いロープが、橋の上に落ちている。

「わぁー、たいへんだァ」
二人の男が橋に駆け込んできた。 そして欄干に手を掛けて身を乗り出し、上流をしきりに見つめている。
「おぅーい、今助けるからなァ、待ってろォ!」
男は口の両端に手を当てて、上流に向かって叫んだ。
見れば、女が一人、溺れながらこちらに流されてくる。
もう一人の男が、傍にロープが落ちていることに気が付いた。
「おお、そうだ…!」
男はロープを手に取ると、先端に素早く輪をつくり、
「よォーし、これにつかまれー!」
と川に向かって放り投げた。
ロープは丁度いい具合に、女がもう少し手を伸ばせば届く位置に落ちた。
今や首まで沈んでいる女は、最後の力を振り絞って水中から両腕を引き抜くと、飛びつくようにしてロープの輪をつかんだ。
「やった!」
二人の男は同時に歓声を上げた。 そして、渾身の力を込めてロープを引き上げた。