【雛】


お兄ちゃんに抱き締められた。



「…お兄ちゃん?」


どうしたの?
なんであたしを抱き締めるの…?



どうしてあたしの胸は高鳴っているの?



「黙って。」


また強く抱き締められる。

―――!!!

やだ…なにこれぇ……。

心臓、止まらない…。

お兄ちゃんの顔が近くにあって…、苦しい…。


ドクン…
ドクン…


お兄ちゃんの手が頬に触れた。


ドクンッ…。



「雛が無事でよかった…」


やだ…。そんな顔、しないでよ…。



苦しい。苦しいよ…。

お兄ちゃんの顔が、手が、すべて捕らえて離さない。


あたしの身体は抵抗するのを忘れ、いつまでも抱き締めあっていた。




この気持ちがなんなのか、分からずに。