ヤンキーと俺と恋と


この場をどう乗り切ろうかと焦っていた俺の横で、葉が突然口を開いた。



……賭け?



「賭け…って…なんの?」

「ホラ、俺らのこの格好でさ、愛美ちゃんにバレるかバレないかのだよ!ヤンキーみたいな格好だろ俺ら?こんな格好してたら絶対バレないと思ったんだけどなー!さすがは愛美ちゃんだな!歩人の言った通りだった!あーあ、賭けは俺の負けかぁ!」



…なるほどね。


咄嗟の出まかせにしちゃ上出来だ。


俺も即座に葉に話を合わせる。


「…な?言ったろ?いくら格好変えても声でバレるって。賭けは俺の勝ちだな!」



がはは、と笑ってみせる。



この出まかせを信じたか信じてないのか、今の愛美の表情からはそれを判断するのは難しかった。



「ふぅん…まぁとにかく、二人とも殴られたんだから、早く家に帰って冷やさなきゃダメだよ?」

「わかってるって!まさかあんな邪魔が入るとはな!まぁとにかく俺ら教室に着替え取りに行くから、お前は早く帰れよ!もう辺りも暗いしな」



俺はとにかくこの場から早く愛美が去るように促した。


冴島をちらりと見ると未だKOしたままだった。

まぁその方が都合はいいんだが。



「…わかった。歩人も葉くんも気をつけて帰ってね。じゃあね」


どうも釈然としない、と言った顔のまま、愛美は帰路へとついていった。