「…愚問だ」
「遅刻したんでしょ」
「…さいです」
わかってて聞いてきたなコイツ…と不審の目を愛美に向ける。
しかしそんな俺には目もくれず、さらに愛美は続ける。
「相変わらずだらしないねぇ。紗代に頼み込んで起こしてもらえばいいのに」
「葉と同じ事いうなっての…俺はアイツに頼み込むなどという下手にでた行為はしたくないんです!」
「…なんで敬語?でもそうでもしなきゃおばさん帰ってくるまでずっと遅刻じゃん」
「ナメんな!その気になりゃ目覚まし時計でも買って自分で起き」
「れないでしょ」
「…はい」
俺が一度寝たらなかなか起きない事は愛美もよく知っている。目覚まし時計程度の音では、俺の安眠を妨げられないのだ。
だから母は俺を起こす時、耳元で「お・き・て」と優しく言う事で、今まで見ていた夢が一気に悪夢となり、仕方なしに目覚めるのだ。
もちろんこんなこと、妹の紗代はやるはずもない。

