言いたい事は次々に浮かんだが、すぐ頭から消えた。
今のビンタに込められていた、龍の様々な思い。それが俺に反論する気を失せさせていた。
「ホラ、早く行かねぇと愛美ちゃん、家にいなくなっちまうかも知れねぇぞ?」
…確かにその通りだ。
愛美はもう帰宅してるだろうが、いつまでも家にいるとは限らない。出掛けてしまっていたら、今日はもうチャンスはないだろう。
…だが、俺には明日以降は考えられなかった。
龍にも応援してもらえて、気持ちが高まっている今日…今から、伝えなくちゃ。
今、告白しなくちゃ。
「…あぁ、じゃ、行くわ!じゃあな龍!」
殴るのは…もとい、ひっぱたくのはもうやめてくれよ、と手を降る龍に思いながら屋上から出た。
別れ際、龍には迷いを押し殺したような、決別したような、そんな様子が一瞬見てとれた。
…全部、精算しよう。
俺が抱えてきた悩み、不安を、愛美にぶつけよう。
──階段を降りながら、俺はそう決心した。

