ヤンキーと俺と恋と




「えっ」



振り返ると、葉がこちらを真剣な眼差しで見ている。…と思ったら、破顔して続けた。



「…花火大会だよ。今年は花火の数少ないらしくてよ、観客も例年に比べて減るだろうって言われてるみたいだぜ。だから見に行くとしてもそんな混雑はしねーだろ」



…花火大会?
そういや花火と言えば夏休みの代名詞だな。さっきも花火見に行こうって騒いでた生徒らがいた。

でも…



「…別にそんな心配してねぇよ。つーかなんでいきなり花火大会なんだよ。もしかして一緒に行きたいのか?ゴメンだね、男二人で花火大会なんて」



両腕で自分を抱きながら身を震わせるようにして言う。



「ははっ、それよりも行かなくていいのか?なんか急いでるみたいだったけど」



葉の言葉で再び身が引き締まる。鞄を持ち直した。



「そうだ!じゃな葉!いい夏休みにしろよー!」



花火大会は行かねぇけどな、と付け加え、教室から出た。