──その、龍を傷付けようとしている。
信頼関係が深いほど、俺がやろうとしている行為によって生じるダメージは大きい。
今まで積み上げてきたモノが、一気に崩れ去る。
俺が、龍に与える影響。深い傷を負わせるだろう確実な予測。
龍と過ごした日々が…二人で遅くまで話し合いをしていた日々が──楽しみを感じていた日々が、全て無くなる。
それは本当に辛い。俺の日常に、龍は鮮やかな色を加えてくれていたから。
…だけど……──
《──…では皆さん、充実した夏休みを過ごしてください》
考え事をしてる間に校長先生の話は終わり、終業式は終わった。
クラスごとにぞろぞろと教室に戻り、やがて龍の姿は体育館の出入口で見えなくなった。
──…全てを失う覚悟を持って…龍、お前と接する。
俺にはその覚悟が必要なんだ。
誰も見えなくなった出入口を見つめながら、密かにそう決意した。

