「押川、愛美ちゃぁぁぁん!!」
「!?」
愛美がビクッとして冴島の方に振り返るのが見えた。
俺は同じ場所でその様子を見守っていた。
冴島は猛スピードで愛美の所へ駆け寄って行き、そして愛美の目の前で急ブレーキをかけた。
愛美はその迫力に気圧されてか、二、三歩後ずさりして、驚きをかくせない表情で冴島を見ている。
周りにいる下校しようとしていた生徒達も、愛美と同じような表情で冴島を見ていた。
「ハァ…ハァ…愛美ちゃん…」
息を切らしながら、冴島は愛美の名前を呼ぶ。
「え…、な、なに…?」
愛美は完全に困惑しきっている顔だ。
それにしてもハタから見ると奇妙な光景だ。
学校一のワルと恐れられている冴島が、一人の女の子の前で顔を真っ赤にしながらしゃべっているのだ。
これはこれでなかなかおもしろい状況だ。
「…愛美ちゃん!」
「は、はい」
冴島が声を強める。
一体なにを言うのだろうか。この男は。
俺も愛美も、おそらく周りの皆も、ここに居合わせる全員が、固唾を飲んで次の冴島の言葉を待った。
「俺と……
…俺と付き合ってくれ!!」
「はぁ!!?」
「えぇ!?」
「「えぇぇぇぇぇぇ!!?」」
第1部 完