正面玄関から学校に入り愛美と別れ、下駄箱から内履きを取り出す。
教室に向かう道中に、何人もの生徒とすれ違う。
朝の廊下で生徒を見ると、改めて感じる。
戻ってきたんだなぁ…
遅刻して学校に入ると、廊下には誰もおらずひっそりとしている。聞こえるのは惨めに急ぐ自分の足音のみ。
前も感じた事だけど、朝の賑やかな光景はやっぱりいい。皆が晴れやかな声で挨拶を交わしているのが、朝のもやもやした空気を吹き飛ばしていたのだ、と感じる。
教室のドアを開ける。
前方には、席につき友達と話している葉の後ろ姿が見えた。
「――…したらよう、~…」
聞いた瞬間わかった。
あぁ、こいつ自分のフルネームを会話に持ち込んで、それを笑いのネタにしようとしてるな、と。
だが、友達は気付いてない。そのまま普通に会話を続けてる。
葉は気付かれてない自分のギャグを、懲りずにまた使う。
「――したらよう!」
俺はため息をついて、近付いた。
「…自分のフルネームを入れてるのそんなに気付いて欲しいのか」

