「早く感じるのは、その分充実してたって事だろ」
「…うん」
充実してた時間かどうかわかるのは、その時間を実際に過ごした者だけ。だったら今の時間は凄く大切だ。俺達が判断するその時間は、短いのだから。
「充実した高校生活ってのは、後々財産になると思う。だったら今、楽しめる分は全て楽しんどこうって思わねぇ?」
「…そうだね」
愛美が笑顔になる。悲壮めいたものがなくなったように。
それを見て、自分自身の気持ちも晴れ渡っていくようだった。『キミはボクの太陽さ』という外国人じみた比喩表現が、よくわかる気がする。俺にとっての太陽なんだ。君は…。
「…つまり、勉強ばっか気にせず、学校生活をエンジョイしましょう、って事だ」
「そーいえば、期末テストの結果が廊下に貼り出されるね。あぁ~気になる~。歩人は何位だろうねぇ?」
愛美がニヤニヤしながらこちらを見てくる。
しまった…!墓穴掘った!
また余計な事まで喋っちまった!
それからの登校は、横の愛美の悪魔のような笑顔と、これから待ち受ける残酷なテスト結果の恐怖と闘いながらの登校になったのだった。

