───… 車輪の回る音、風を切る音。 その二つの音が耳に響く。 自転車をこぐ俺。 その足取りは軽快だった。 後ろに誰かが乗っている。 その人が俺の足取りを軽くしていた。 「──もっともっと!」 その人の楽しそうな声が響く。 俺は立ち上がり、自転車を深くこぎだした。 ──ふと、思う。 (…あれ?この光景…昔あった気がする…) が、どうでもいいか、とすぐに頭から切り離す。