「…感…謝?」
愛美が今日こうして会ってくれている。
その理由は、一時は同好会の存在がばれ口を聞いてくれる事もなくなったが、この前の一件があり、心境に少なからず変化が生じたから。許してもいいかな、と思ってもらえたから。
俺はずっとそう思ってきた。
──だが、違った。
愛美は、アレを感謝していた。
ただ、目の前の状況を茫然と見ているだけじゃなかった。
…あんな酷い目にあった事は、自分の記憶から消去してもいい出来事なのに、愛美はそれをしなかった。
助けてくれた、と事実を心に記憶させるために──。
感謝している、と言う愛美の言葉は、なかなか頭に入っていかなかった。
「うん。…それでね、歩人」
愛美は立ち止まった。そして顔を向けてくる。
「…今までの事は全部忘れて、また最初からやり直さない?高校に入学したばかりの、あたし達みたいに」
愛美はそう、言った。

